糖質制限による体重減少効果はあるのか?

糖質制限を勧める人が、ダイエット効果としてあげている利点には、それってどうなの? というものが結構あります。今回は、糖質制限ダイエットの第一人者、江部康二先生の主張を取り上げてみようと思います。

スーパー糖質制限食の利点とは?

江部先生は、スーパー糖質制限食の4つの利点として、以下を挙げています。

◆<糖質制限食による体重減少効果>
①インスリン(肥満ホルモン)が基礎分泌以外ほとんど出ない。
②食事中も含めて常に体脂肪が燃えている。
③食事中も含めて常に肝臓で糖新生が行われ、それにかなりのエネルギーを消費する。
④高タンパク食により、食事誘発熱産生(DIT)が亢進する。

引用 糖質制限食による体重減少効果。2016年2月。(2月10日の記事)

一つ一つ検証してみましょう。

①インスリン(肥満ホルモン)が基礎分泌以外ほとんど出ない。

インスリンが出るか出ないかは、ダイエットとは関係ありません。次の記事を参照してください。

>>血糖値やインスリンはダイエットとは関係ないんです

②食事中も含めて常に体脂肪が燃えている。

これもダイエットとは関係ありません。体脂肪が燃えているのが事実だとしても、燃えた分のエネルギー量を食事で摂取してしまえば、瘦せることはありません。瘦せるかどうかは、摂取エネルギーと消費エネルギーの差がどれだけあるかだけで決まります。

③は、いったんとばします。

④高タンパク食により、食事誘発熱産生(DIT)が亢進する。

ダイエットの時はタンパク質を多めに摂取するようにするのは、基本のキです。これは糖質制限であろうと、脂質制限であろうと変わりありません。となると、タンパク質の量の差による、食事誘発熱産生(DIT)の差もないということになります。

たた、筋トレをしないのなら、タンパク質を多く摂るのは、本当はあまり意味はありません。多少多めに摂った方がいいというぐらいです。どうせ筋肉にならないので。

③食事中も含めて常に肝臓で糖新生が行われ、それにかなりのエネルギーを消費する。

となると、ダイエット効果がどれぐらいあるのかどうかは、この「糖新生」によるエネルギー消費がどれくらいあるかにかかってきます。そして、このエネルギー消費量は「かなり」としか、書かれていません。私も、いろいろと調べましたが、糖新生に必要なエネルギー消費量がどれくらいあるかどうかが、明確に書かれている資料はみつかりませんでした。

しかし、です。

そもそも、糖質制限をすると、ケトン体ができて、それが糖の代わりになるというのが、糖質制限派の主張です。特に、脳は糖だけではなく、ケトン体もエネルギー源として使えることを強調します。

であるならば、糖新生の必要性はほとんどないはずです。

糖新生(肝臓でアミノ酸、乳酸、グリセロールなどからブドウ糖を作る)は、脳ではなくて赤血球のために必要なのだと思います。脳と違って、赤血球は血糖値35mg/dlくらいでも生きていけるようです。

引用 脳はケトン体をエネルギー源とします。

と、江部先生も自らお書きになっています。

とういうことは、「食事中も含めて常に肝臓で糖新生が行われ」というのは、本来は必要のない無駄な糖新生が行われているということになります。

簡単に言えば、タンパク質の無駄燃えです。糖新生はタンパク質を利用して行われます(糖原性アミノ酸)。ですがタンパク質は、筋肉などの材料として使われるのが本来的な役割のはずです。

タンパク質は、今の自分の筋肉量を維持できる分だけを摂取していれば本当はそれでいいのです。ハードに筋トレをする人は、多めに摂ったタンパク質が筋肉になる可能性があるので、それはそれで意味があります。しかし、普通の人が必要以上にタンパク質をとっても、体の中で無駄燃えするだけです。

高いお金を払って、肉を食べて、いらない分を無駄燃えさせているようなものです。

起こす必要のない糖新生を起こし、それをダイエットに効果あると言って喜ぶのも何だかな〜と思います。糖質制限派の人は、タンパク質を減らして、その分を脂肪で摂った方が、安上がりでいいのではないでしょうか。